中之条ビエンナーレ2021出品作
中之条産業近代史
養蚕の非近代化について
巳巳
「中之条ビエンナーレ2021アーティストトーク 9/16 」
にてこのサイトの内容を講演しました。
こちらも併せてお楽しみください。(Youtubeにリンク)
巳巳は1:04~1:28に出演しております。
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群馬県中之条町は、東京都心からクルマで2時間半ほどだが、絵に描いたような郷愁を誘う風景がある。
青々とした田んぼ、木造校舎、清流、降るような星空、そして温泉・・・
誰もが心に思い描くような田舎の光景である。


しかし
よく目を凝らすと、都心にいてはわからないような、自然と文明とのせめぎ合いが見られる。
電流の通った境界で、畑をイノシシ被害から守る。
中之条のとなりには八ッ場ダムがある。
中之条の美しい山を横切る巨大な鉄塔は柏崎刈羽原発から東京への電力供給の電線である。

かつて群馬鉄山という鉄鉱山があって武器製造と戦後の経済成長を支えていた。
(鉄鋼石を積みだした太子(おおし)駅は、今は産業遺構となっている。)
画像はこちらからhttp://sight-doboku.blogspot.com/2017/12/blog-post.html

最近では山を切り開いてソーラーパネルが配置される様子も数多くみられるようになった。
この町は文明と自然のせめぎ合いの前線ともいえる。
そして
当地の近代産業と聞いて誰もが思いつくのはやはり
養蚕
である。

養蚕は、自然と近代文明とのせめぎ合いの特別な局面である。
養蚕は産業近代化というより「近代化できなかった」と言ってよい。
養蚕業は近代の賃労働に馴染まず、むしろ心情や愛情をもった人間的な営為であり、そして人間が自然をコントロールしようとすることの限界をも考えさせられる。
それは最近限界を見せ始めている近代主義や資本主義を見直すことを示唆しているようにも思える。
私は養蚕業に現代文明が置き去ったものを見た。
本作の内容は中之条という場所の枠からはみ出て、今我々を取り巻く文明の姿のイメージを描くものとなっている。
いわば「中之条を含む養蚕業からみた文明論」というべきものとなっている。
